松井珠理奈卒業後の体制は?【SKE48の現在】次世代センターと課題

AKB48の誕生から約2年8ヶ月後、初の姉妹グループとして名古屋を拠点に結成された「SKE48」

デビュー当初より中京テレビやメ~テレなどの地元メディアと密接に連携をとるプロモーション戦略を展開してきた。

また、愛知トヨタ自動車のCMに5年半に渡って継続的に起用され、最近では大垣共立銀行とのコラボで広報ユニット「OKB5」を結成。

今までのご当地アイドルよりワンランク上の市場規模で地域活性化を図っていく活動スタイルは、その後NMBHKTなど全国展開していく48グループの先行モデルとなったことは間違いない。

 

そのSKE48も2020年の今年で結成12年目。弱冠11歳でデビュー、10代の全てをSKE48に捧げ、最後の選抜総選挙で1位に輝いたスーパーエース・松井珠理奈が2021年春に卒業を予定しており、転換期を迎えていることは明らかだ。

 

2020年1月に発売された26thシングル「ソーユートコあるよね?」では同総選挙で2位となった苦労人・須田亜香里(3期生)が初のセンターに選ばれるなど明るいトピックスもあるものの、彼女も既に28歳と卒業を視野に入れるべき年齢。

松井珠理奈のように、アイドルとして伸び盛りのタイミングに長期でセンターを任せられるエースを育成・発掘していくことが急務といえる。

2020年8月現在、グループ自体の将来を決める分岐点に立っているSKE48の現状および、今後の課題や他のアイドルにない強みなどを分析してきたいと思う。

 

豊田スタジアム以降の低迷

SKE48は2014年2月、全国ツアー公演「箱で推せ!」のファイナルを地元・ナゴヤドームで飾り、2日間で【6万6000人】を動員した。

48系のグループによる単独でのドームコンサート開催はAKB48でも経験がなく、SKE48が初。冒頭でも述べたが、地元での支持基盤を着実に固めていく戦略が実を結んだといえる。

松井玲奈もこの時点ではまだ在籍しており、松井珠理奈・松井玲奈のWエース体制が効果的に機能していたというのも大きい。

更に翌年の2015年8月30日、豊田スタジアムで開催された松井玲奈卒業コンサートではSKE48史上最高となる【4万5000人】の動員を達成した。

 

姉妹グループや坂道グループの台頭もあり低迷期に

だが、丁度この時期にNMB48・HKT48といった姉妹グループや公式ライバルの乃木坂46の成長度が著しく、業界におけるシェアの奪い合いが激化

ファンの分母数もかなり流動的になっていたため、人気の指標となるシングルCD売上も松井玲奈の卒業後は下降線を辿ることとなった。

2015年3月に発売された「コケティッシュ渋滞中」が累計【70.2万枚】とSKE48のシングルとしては最高到達点なのだが、同年8月に発売した「前のめり」が【45.9万枚】、その次の2016年第1弾シングル「チキンLINE」が【36.5万枚】と、急降下しているのが明らか。

2018年にTBSテレビが制作した、タイトルもズバリ「アイドル」というSKE48のドキュメンタリー映画がある。

ネタバレを防ぐために具体的な解説は避けるが、この映画でもやはりナゴヤドーム~豊田スタジアムで勢いのピークに到達した後の低迷状態にスポットを当てており、

「再度ナゴヤドームに立つためにはどう戦うべきか」

というテーマを軸にストーリーが展開された。

松井玲奈の卒業を境にSKE48は「暗黒期」ともいえる長いトンネルに突入。地元メディアでの露出は安定していたものの、一般層への訴求が最も弱かった時期でもある。

この間、2015年~2016年に加入した7期生及び8期生メンバーはグループ低迷の影響を直に被ることとなり、短期間で卒業するメンバーも多く、現時点で残っている顔ぶれを見ても7期生野島樺乃、8期生井上瑠夏など、実績・知名度共に若干弱いと言わざるを得ない。

(客観的な視点から言うと、同時期にメディア注目度の高いドラフト企画で加入してきた水野愛理、菅原茉椰あたりと比較しても現時点での知名度では遅れをとっている)

 

小畑優奈卒業の痛手

低迷期の煽りを受けた不遇の世代の中にも1人スーパーエース候補がいた。小畑優奈である。2015年3月に7期生としてデビュー、2019年3月に卒業した。

加入当初から天性のアイドルセンス溢れる佇まいとルックスで高い評価を受けていたが、2017年7月、21stシングルである「意外にマンゴー」では初選抜にして初センターを獲得。

 

SKE48歴代センター(+ボタンをタップすると開きます)
◆2009年
1 強き者よ松井珠理奈
◆2010年
2 青空片想い松井珠理奈
3 ごめんね、SUMMER松井珠理奈&松井玲奈
4 1!2!3!4! ヨロシク!松井珠理奈&松井玲奈
◆2011年
5 バンザイVenus松井珠理奈&松井玲奈
6 パレオはエメラルド松井珠理奈
7 オキドキ松井珠理奈
◆2012年
8 片想いFinally松井珠理奈&松井玲奈
9 アイシテラブル!松井珠理奈
10 キスだって左利き松井珠理奈&松井玲奈
◆2013年
11 チョコの奴隷松井珠理奈
12 美しい稲妻松井珠理奈&松井玲奈
13 賛成カワイイ!松井珠理奈&松井玲奈
◆2014年
14 未来とは?松井珠理奈
15 不器用太陽松井珠理奈
16 12月のカンガルー北川綾巴&宮前杏実
◆2015年
17 コケティッシュ渋滞中松井珠理奈&松井玲奈
18 前のめり松井玲奈
◆2016年
19 チキンLINE松井珠理奈
20 金の愛、銀の愛松井珠理奈
◆2017年
21 意外にマンゴー小畑優奈
◆2018年
22 無意識の色小畑優奈
23 いきなりパンチライン松井珠理奈
24 Stand by you松井珠理奈
◆2019年
25 FRUSTRATION古畑奈和
◆2020年
26 ソーユートコあるよね?須田亜香里

 

実はこの「初選抜にして初センター」というのも、企画モノであるじゃんけん選別センターの元AKB48内田眞由美を除けば、48グループ史上初の快挙だった。

彼女がセンターを務めた「意外にマンゴー」は累計売上【34.1万枚】。その前のシングル「金の愛、銀の愛」が【32.4万枚】と、ここまで下降を続けていた売上推移が遂にプラスへと転じる。

小畑優奈は2018年1月「無意識の色」でも引き続きセンターを担当。累計【38.6万枚】で2作連続の売上増加でグループの期待を背負っていた。

 

再び松井珠理奈をセンターに戻すが、、、

このまま小畑優奈をエースに固定し、彼女と心中する覚悟で一気に攻勢を仕掛けてくるかと思われたのだが、次回作「いきなりパンチライン」で再び松井珠理奈をセンターに戻すことに

地元名古屋開催での最後の総選挙(総選挙は2019年以降開催されないことが発表されている)にタイミングを合わせたシングルでもあり、松井珠理奈の存在を改めてプッシュしていくという意味でも自然なセンター起用であると思われた。

だが、今になってみれば、総選挙での命を削るような激戦の代償として松井珠理奈が心身を崩し長期休養からの卒業発表に至ったことや、翌年2019年3月に小畑優奈が卒業してしまったニュースと照らし合わせて考える限り、もう少し松井珠理奈を気楽な立場のままで泳がせつつ小畑優奈センターで我慢したほうが良かったのではないか?という気がする。

この時の運営の采配にミスがあったかどうか、正直外野の人間としては何とも言えないところではあるが、2018年に3枚のシングルをリリースした後、2019年は「FRUSTRATION」1枚しかシングルを出せていないという事実からも、グループの内部で立て直しを図るのに相当時間がかかったのではないかと思われても仕方がない。

少なくとも、小畑優奈が順調にグループの大黒柱として育っていればSKE48の現状が今とは全く違う景色になっていたのは確実である。

 

古畑奈和イメチェンの効果

2019年唯一のシングル曲「FRUSTRATION」のセンターは古畑奈和(5期生)。依然としてコンディションが安定しない松井珠理奈は1.5列目に。

古畑奈和は元々握手会での神対応に定評があり、柏木由紀や渡辺美優紀のようないわゆる「釣り師」としてファンからの支持が厚かった。

ところが、2018年夏のイベント中にステージ上で髪の毛を切るという大胆なパフォーマンスを実行、その後は金髪にピアスのボーイッシュなクールキャラに転身。

そのため本来彼女を応援していた層は徐々に離れていったのだが、その流れでの彼女のセンター器用には反発も多く、正統派の若手メンバーを抜擢するべきという意見も飛び交った。

ただ、これも結果論となるが、古畑奈和のイメチェンはトータルで見れば成功の部類に入ると個人的には判断している。

 

アイドル業界の現状と重ね合わせて考察すると、

  • BiSH
  • ZOC
  • ヒロシン(悲撃のヒロイン症候群)

などパンク系アイドルが空前のブームを巻き起こしており、オタクに媚びないスタイルのアイドルに憧れを抱く女性ファンも着実に増加。

従来のアイドル像が急激に変容しつつある状況において、古畑奈和が早い段階でサブカル寄りの同性ウケしやすいビジュアルに自身をアジャストさせていったのは、意図的ではないにせよ先見の明があったといえるだろう。

コロナの影響で接触イベントが当面開催できない状況になり、黒髪清純派アイドル至上主義の口うるさいファンから直接批判を浴びせられる機会が無くなったというのもむしろ彼女が伸び伸びと個性を発揮できる追い風となっている。

 

松井珠理奈卒業とダンスメンバーの再評価

2020年1月に発売された最新シングル「ソーユートコあるよね?」はDA PUMPのTOMO、KENZOら4名が振り付けを担当。

子供の頃に遊んだゴム跳びの動きを取り入れたダンスは、ゴム跳びの別名である「キャンロップ」をもじって「ケンロップダンス」と命名。

K-POPを意識したセクシーポップな楽曲やカラフルでガーリーな世界観のMV、女性らしい曲線の流れを前面に押し出すダンス&フォーメーションは今までの体育会系的全力ダンスと全く方向性が異なる。

このシングルで松井珠理奈は選抜メンバーから外されており、後日卒業を発表。おそらく楽曲制作の段階から卒業はほぼ決定事項だったのではないだろうか。

 

苦労人・須田亜香里(3期生)は26枚目のシングルにして遂にセンターを獲得。

もちろん松井珠理奈の休業中は須田亜香里センターでのメディア出演が多かったのだが、松井珠理奈という存在が抜けたことにより序列を気にする必要がなくなったのも、正式にセンターとして任命された理由のひとつではあるはず。

また、「ソーユートコあるよね?」のような華やかなダンスで魅せるタイプの楽曲で、基礎的な身体能力の高い須田亜香里をセンターに起用したのも、SKE48の原点である「ダンス重視」コンセプトを再度固めていこうという運営の意思表示が見える。

2019年7月よりそれまで劇場支配人を務めた湯浅洋に代わり、SKE48キャプテンで48グループ屈指のダンススキルを誇る斉藤真木子(2期生)が劇場支配人に就任したのがコンセプトの再補強と関連しているかどうかは定かでないが、2020年に入ってダンスを得意とするメンバーのグループ内評価が上がってきた印象は強い。

 

清純派で幼い顔立ちだが意外に美脚でスマートなダンスワークを武器とする江籠裕奈(えご ゆうな 5期生)が、今回の最新シングルMVでミニスカートで足を組み替える大人っぽい色気を放つシーンはこれもK-POP的な女性の美しさを目標に見据えたものに感じる。

先述した古畑奈和もダンスが非常に得意なメンバーの1人であり、須田亜香里と共にフロントポジションで素軽いフットワークのダンスを披露。

更に目を惹くのが青木詩織(6期生)。なんと髪の毛を青く染めてのMV出演。元々サバサバした雰囲気のキャラだったが、現在もかなり短めのショートカットで活発な印象を与えている。

先ほど名前が出たドラフト2期の水野愛理もこの1年間で髪の色が明るくなり、最近のアイドルオタクが好むようなドール系の都会的な髪型にチェンジした。Twitterのエゴサでファンにイイネする頻度が高いのも自由奔放で新しいアイドルといった感じだ。

 

SKE48の原点「ダンス」

SKE48自体、他のグループと比べるとイメチェンには寛容なのだが、やはりオタク需要の筆頭格だった釣り師の古畑奈和が率先して自分の好きなファッションにこだわりだしたというのも、道を作ったという意味では大きい。

ダンスメンバーでいえば日高優月(6期生)。体幹の強さを生かした身体制御力抜群のダンスで一部の目の肥えたファンからは熱狂的な支持を得ていたが、ステイホーム期間にYouTubeでダンス動画を披露するなど、彼女の個性を発揮する場が徐々に増えつつある。

好材料は他にもある。2020年4月より地元・メ~テレで「SKE48ガチであれ!?始めちゃいました ~涙の1年間ダンス修行~」が放送開始。

ここでも井田玲音名(6期生)・杉山愛佳(7期生)などダンス自慢のメンバー6名が集結し、ダンス特化型の番組内容でSKE48のダンスメンバー層の厚さを見せつけた。

SKE48はスーパーエース松井珠理奈を中心にしてここまで活動してきた。

ただ、猪突猛進的な精神でグループを牽引してきた彼女の卒業により、ビジュアルやダンス面で最近の流行にフィットしやすいカジュアルな空気感を出せる状態にグループ自体がチューニングされたのは誰が見ても明らか。

今後のアイドル業界生き残りゲームにおいて有利なスタイルを手に入れたのは間違いないだろう。

 

【まとめ】

SKE48の現状について分析してきたが、やはり最新シングル「ソーユートコあるよね?」がグループとしての新しい方向性を示す楽曲であるというのは外せないポイント。

先ほど述べた

「K-POP嗜好」

「全力ダンスからの脱却」

以外にもう一点、

「前奏が無く、インパクトの強い高音ヴォーカルから入る」

という特徴も、サブスク全盛の音楽シーンにおいて前奏の長い曲が序盤で閉じられやすいという近年の傾向に適応しており、業界の流れをタイミングよく掴んでいる。

 

W松井の強力なツートップ体制でAKB48の背中を追い続けてきた最盛期から、松井玲奈の卒業、そして今回の松井珠理奈の卒業と2段階の波をなんとか乗り越えたという印象もあり、48系列の中では今後の楽しみが多いグループといえそう。

あとは現在暫定センターである須田亜香里をどのタイミングで卒業させるかが今後の鍵となってくるだろうが、仮に古畑奈和が再度センターに返り咲いた場合、今の彼女のスタイリッシュなビジュアルを最大の武器として打ち出す、よりK-POP的な嗜好性の強い方向に進化していく可能性も。

最近では虹プロの出現が日本のアイドルシーンにとって黒船並みの衝撃をもたらしているが、SKE48のダンススキルは世界で戦えるレベルにあると期待しており、伝統の48グループを新興勢力から守る最後の砦になってくれそうな予感すらある。